Linuxのしくみ ~実験と図解で学ぶOSとハードウェアの基礎知識 を読んで

Linuxのしくみ ~実験と図解で学ぶOSとハードウェアの基礎知識 を読んで

著者の武内覚さんから献本(電子書籍)していただいたので、読み終わった感想などを書こうと思います。

目次

http://gihyo.jp/book/2018/978-4-7741-9607-7#toc

一番特徴的と思ったこと

表現方法の工夫です。
全体で、後書きまで入れて、268Pあります。自分は、じっくりというよりも、割と流し読みのかんじですが、PDF形式でパソコン(Mac Book)を使用して、概算で4から5時間の間で読みきりました。だいたい、1分間に1ページくらいのスピードです。これは、決して読むのが早いわけではなく、表現の仕方によるものが大きいです。

  • 説明文
  • 図表
  • 実験
  • ソースコード
  • 画面のコピー(主にコマンドなどの実行結果)
  • チャート

1ページあたりの情報量は決して少なくはないですが、上記のような構成になっていて視覚的にも、思考の流れとしても飲み込みやすい表現になっています。
まず、文章で説明します。この際に、要点を中心にかなり簡潔にまとめています。
その後、概念を図式化します。言葉だけではイメージしづらい部分を中心に、図示が行われます。また、図表も情報量が多くなりすぎないように工夫されています。
その後、説明されたとうりに動くかどうかの実験方法を示唆されます。
実験を行うためのプログラムが提示されます。
実験の結果、実行された結果の実際の「画面」が提示されます。
最後に、実験の結果を読み取りやすい形でチャートにされます。

この一連の流れの中で、概念とイメージ、それを裏付けるために必要な証拠、手に入れるためのツール、実際の動作状況、最後に実験結果を理解するためのチャートと、思考の流れをうまく制御してもらえるので、スムーズに読み進めることができます。

また、これは、「科学の力」を利用する上で、一番大切な、「推測するな計測しろ」の実践方法にもなっています。 なぜ、こういう風に組み立てられると理解できるのか? という、自己体験も、なかなかに、興味深いものでした。

感想


  • 全体的に、とても読みやすく工夫されていて良い本だと思います。久しぶりに、この辺りのことを一気に本で読んだので満足感は大きかったです。メモリの理解のところあたりが、これを読んでいると、他の入門書と個人的に比べると、理解度がずいぶん良いので、この辺りを読むのは楽しかったですねぇ。
    btrfsで一章取っているのは、著者の思い入れなんでしょうか?(笑)
    ファイルシステムと、ストレージを分けて考えさせるところは、とても良い考えだと思いました。この辺りは、よくごっちゃになっているので。


  • Cのソースコードや、Shellのコードなどは、本文には、なくても良かったと思います。
    Githubで、公開されていると記載されていましたし、付録で巻末に入れる形でも良かったかなぁと。
    あ。袋とじもいいかもしれない....。
    やはり、Cのソースがあると、読まなくてはと思ってしまうバイアスがかかりますし、ぱらぱらめくった時に、この部分だけ、異様な迫力を感じます。できれば、Cのソースを見ると、パタンと本を閉じてしまうような人にも、読んで欲しいので、そう思った次第です。

読んで欲しいと思った人

  • コンピュータの初学者
    できれば、コンピュータに触れるようになった後、割と早い段階で、読んで欲しいなぁと思いました。 本文にも書いてありますが、中に記載されている、C言語などのツールの中身は理解できなくとも、全体を通して読むのは、標題にある「 Linuxの仕組み」を理解するだけでなく、「科学の力」をドキュメント上で味わうことができます。

  • 技術的な報告書で人に理解させるのが苦手な人
    この本の表現自体が、教師となってくれます。メタな体験として、かなり良いものかと思います。

  • 経験は長いが、雰囲気できちゃった人
    僕です。

読むのには準備がいる人

全くコンピュータの経験がない人は、辛いかとおもいます。「基本的なコマンドさえ知っていれば」でも、ちょっと辛いかなぁとは、思いました。

  • アプリケーションなら、小さなものでも良いので、OS 上で、何らかの言語を使って組んだ。
  • OSのインストールとかは経験した。

ぐらいは、経験してないとダメかなぁと思います。相当、初期で行けるとは思いますが。

試しに読んでみて欲しい人

PaaSとかしかやったことない人とか、読んでみて、感想聞きたいですねぇ。
後、組み込みとかしかやってなくて、Linux OSに興味ない人とかも。

今後に望むこと

この手のスタイルの本は、貴重だと思うので、続編が欲しいです。
できれば、ものすごく難しい題材を料理してみて欲しいです。

謝辞

献本ありがとうございました。
また、このような本を書いて出版してくださった関係者の皆様に、お礼を申し上げます。

最後に

面白かった!!!