THE INTEL TRINITY : インテル 世界で最も重要な会社の産業史
年末の休みに一気に読み切った一冊。
去年読んだ本の中では、いままで知らなかった事を教えてもらった点で一番面白かった本となった。
原題は、Intel 創始者達の集団的 組織の指導を現している。
邦題は、Intel を中心とした、シリコンバレーと、世界の半導体産業の歴史を現している。
いずれの面からにしろ、Intel に対して抱く不可思議な情熱が以下の一言に尽きるのだと言う事を驚きとともに納得してしまった。
それは、HPやIBMが無くしてしまったものを、まだ、Intel は持っている(十字架なのか?存在理由なのか?)という事なのだろう。
TRINITY
二人の創始者と、三番目(社員番号は4番目)の社員をこう呼んでいる。
Gordon Moore
Andy Grove
グローブ が、創始者ではなかった事もしらなかったのだが、ノイス に関しては全く知識がなく、ボケる前に知る事ができて、良かった。。
この三人の人間性と名声と才能が織りなす人間関係により、どれほどの歴史が変わったのだろうと、読みながら呆れる。
本文にも書いてあるのだけれど、確かに、シリコンバレーの企業の話で、創業時からのメンバーが、三人体制で、うまくいったというのは聞いた事はあまりない。このケースも決して仲良しというわけではなかったようだ。
本文にこう記されている
”うがった見方かもしれないが、インテル・コーポレーションの最大の成功要因はその圧倒的な競争力や革新性ではなく、同社が恥部として長年隠し通してきたことかもしれない。すなわち、創業者のうち二人の反りが合わずアンディ・グローブがボブ・ノイスを嫌っていたという事実だ。"
しかし、グローブが単純に、嫌っていたのではないだろうという事も、再三、指摘されている。このあたりは、本書を最後まで読み進めば、人間の矛盾に満ちた態度が垣間みえて感慨深い。
いずれにしろ、Intel の前身となる、フェアチャイルドの失敗からTRINITYは育っていきIntel を存在させる事になったのだろうと思わせる。
それにしても、こんな絶妙の組み合わせで、世界を変えるなんて、まったくもって、現実は想像を超えて面白いものだと吐息をついてしまった。
産業史
ソフトウェアの方は、こんな本で少しは知ってた。
肝心のシリコン(半導体)に関してはまったく知らなかった。
ここには、ソフトウェアと半導体の、近くて遠い物語がダイナミックに描かれている。
これは、いま、クラウドなんぞという、まるでソフトウェアだけで世界を創れるような風潮のなかで、何をもっていまがあり、そして、それは変わってはいないということに気ずくきっかけになるんじゃないだろうか。
そして、この歴史は、本当に面白い!!
Intel は、そう、失敗ばかりしている!!
技術だけでは、乗り越えられなかったであろう、数々の出来事が記されていく。
半導体メモリーから、CPUへの転換にもたついたこと。
中途半端な態度のせいで、技術者に逃げられたばかりか、コンペチタに技術的に
先をいかれてしまったこと。
資金が常に足りなくなっていたこと。
それらを、経営者の決断や幸運などを掴みながら世界の中心として、進み続けていく。
政治との関わりや、Microsoft , Apple などとの交差の綾なども読んでいて、もしも?と思わせることばかりだった。
日本の半導体産業との闘いや、そもそもの、ノイスと日本の関係などは、その後の韓国や中国にも繋がっていく普遍の歴史のように既視感が繰り返される。
それにしても、おおきな産業史の流れのなかで、Intel のTRINITY の個人的な判断、とくに、ノイスのせいで、というか、おかげでというか、その後の Intel vs AMD の確執, APPLEのJobs などが影響を受けていたなんて夢にも思わなかった。
歴史に影響を与える個人の人間性というものに想いを馳せるケースが多いのも、シリコンバレーの特質なのかもしれない。
おわりに
半導体の技術者の集団であり、地頭のとんでもなく良い集団があつまり、率いた組織。
しかも、経営の神様の一人が率いていたトップの企業。
しかし、それを支えたのは、成功の連続ではなく、失敗の連続。失敗を、とんでもないスピードで認め突き詰め、その上で、できるスピードではなく、必要な速さで決断と対策を成し遂げる力だった。
いまの Intel には、感じる事はあまりない。
けれど、まだ、その力は眠っているのだろうか?
ムーアの法則を、諦めないのであれば、大方の想像をはるかに超えた、技術と経営が再現される事が必要なんだろうと思う。
本文にある、2013年まで CEO を務めたオッテリーニの言葉はいつまでも続くのだろうか?
"ムーアの法則を潰した男として歴史に名をとどめたいと思うものは、ハイテク業界には一人もいない。私だってごめんだ"